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過敏性腸症候群(IBS)

はじめに

1988年にローマで開催された世界消化器病学会で国際的研究社集団のRome Committeeは、消化管由来と考えられる症状がありながらその原因となる客観的所見を同定できないものを機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorders:FGID)と定義し、機能性胃腸症(機能性ディスペプシア:FD)と過敏性腸症候群(IBS)の診断基準を提唱しました。

過敏性腸症候群(IBS)とは?

過敏性腸症候群(IBS)とは、大腸検査や血液検査で明らかな異常が認められないにも関わらず、腹痛や腹部不快感を伴い、便秘や下痢が長く続く病気です。
日常生活に与える影響が大きく、日本を含む先進国に多く見られるようになってきています。

過敏性腸症候群(IBS)ってどのような症状が出るの?

主な症状は、腹痛もしくは腹部不快感と便通異常です。
腹痛は、左下腹部に最も多くみられますが、部位が一定しないものも少なくありません。
腹痛の性状は、発作的に起こる疝痛(せんつう)(さし込むような痛み)、または持続性の鈍痛のいずれかで、便意を伴っていることが多く、排便後に一時的に軽快する傾向があります。

一般的に、食事によって症状が誘発され、睡眠中は症状がないという特徴があります。
その他、腹部膨満感、腹鳴(ふくめい)(おなかがごろごろ鳴る)、放屁などのガス症状も比較的多くみられます。また、頭痛、疲労感、抑うつ、不安感、集中力の欠如など、さまざまな消化器以外の症状もみられることがあります。
病型別の特徴を述べます。

下痢型

突如として起こる下痢が特徴です。突然おそってくる便意が心配で、通勤や通学、外出が困難になります。また、そうした不安が、さらに病状を悪化させます。

便秘型

腸管がけいれんを起こして便が停滞します。水分がうばわれた便はウサギの糞のようにコロコロになり、排便が困難になります。

交代型

下痢と便秘を交互に繰り返します。

なぜ過敏性腸症候群(IBS)が起こるの?

過敏性腸症候群では、消化管運動異常、消化管知覚過敏、心理的異常の3つが認められます。ただ、これらの異常を引き起こす真の原因はわかっていません。一部の患者さんでは、感染性腸炎のあとに発症することが明らかになっており、何らかの免疫異常が関わっている可能性も指摘されています。ストレスは、症状を悪化させる要因となります。

過敏性腸症候群(IBS)の診断ついて

診断の第一段階は、特徴的な自覚症状のパターンから、まずこの病気を疑うことです。自覚症状からの診断方法としては、ローマ基準という世界的に標準化された診断基準があります。国際的な「Rome Committee」というところが出しています。適宜改訂されており、現在は2016年に改訂されたRomeⅣ(R4)が最新で診断基準は下記の通りです。

  • 腹痛などの症状が排便により軽快する。
  • 症状の有無によって排便頻度に変化がある。
  • 症状の有無によって便の状態に変化がある。

※6ヶ月以上前から症状があり、腹痛あるいは腹部不快感が、最近3ヶ月の中の1ヵ月につき、少なくとも3日以上を占め、2項目以上満たしている。

尚、器質的(身体的)疾患がないことを確認するために、原則として、

  • 尿・便・血液検査
  • 大腸内視鏡もしくは注腸造影(現在はあまり行われません)

を行うことが勧められます。
しかし、診断基準を満たさなくても、身体的な異常が見られず、患者さん本人に、腹痛や腹部不快感などの症状が出ている場合は、過敏性腸症候群(IBS)と診断されます

診断基準を満たしていないからといって、病院に行くことを先送りせず、症状が続いている場合は、過敏性腸症候群(IBS)でないか、きちんと検査してもらう必要があると思います。

治療の方法

治療においては、「命に関わることはないが、経過が長く完全に治ることが少ない」というこの病気の性質を理解することが必要です。また、症状の完全な消失にこだわらず、日常生活のなかで病気とうまく付き合っていくことも大切だと思います。

過敏性腸症候群の治療は、生活・食事指導、薬物療法、が基本になります。
生活習慣のなかで、不規則な生活、睡眠不足、慢性疲労の蓄積、睡眠不足、心理社会的ストレスなど、この病気の増悪因子と考えられるものがあれば修正を試みます。症状を悪化させる食品(大量のアルコール、香辛料など)の摂取はひかえましょう。便秘気味の場合は、水分や食物繊維を積極的に摂取できるような食事をとる様に心がけることも大切です。

運動療法

生活習慣を見直しても改善が見られない場合には、まずは、腸の働きを整える運動療法がお勧めです。
ストレスの解消にもなりますし、運動は腸の働きを正常に整える効果が見込めます。無理に負荷の大きい運動をする必要はなく、起床時や就寝前のストレッチや散歩など、軽い運動を生活に取り入れましょう。

薬物療法

食事や生活習慣の改善、適度な運動でもすぐに症状を改善させるのは難しいのが実情です。日常生活に支障が出ている場合には、薬を併用することも選択肢として良いと思います。
消化管運動調節薬、漢方薬などの腸管蠕動(ぜんどう)調整剤をはじめ、下痢に対して乳酸菌や酪酸菌製剤(いわゆる整腸薬)、止痢(しり)薬の投与、便秘に対して緩下薬、腹痛に鎮痙(ちんけい)薬が投与されることもあります。
最近では、新しいタイプの治療薬として、腸のセロトニンに働きかけ、早い段階から確実に症状を改善する薬も用いられています。

これらの薬剤で改善がみられない場合は、抗不安薬、抗うつ薬が考慮されますが、早い段階で対応出来れば、症状の改善は期待できる病気だと思います。思い当たることがありましたら早めにご相談ください。

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